九代目として
-意思を継ぎ、未来へつなぐ-
第一章 継承された歴史
私は、株式会社上野 九代目を務めております上野拓也でございます。
当家は、明和五年(1768年)の創業以来、二百六十年にわたり、時代の変化とともに事業を変えながらも、「商い」を通じて地域社会とともに歩んでまいりました。
油屋として始まり、肥料商へと転じ、さらに時代の要請に応じて事業の幅を広げてきたその歴史は、単なる事業の変遷ではなく、「時代に応じて生き方を変える力」を受け継いできた軌跡であると感じております。
とりわけ、五代目・六代目が政財界において果たした役割、そして七代目・八代目が時代の変化の中で事業の再構築に尽力した歩みは、現在の私にとって、経営の大きな指針となっております。
第二章 「誰が継ぐか」ではなく「何を継ぐか」
一方で、上野家の歴史は常に順風満帆であったわけではありません。
直系が途絶える局面を幾度も経験しながら、その都度、「誰が継ぐのか」ではなく、「何を継ぐのか」が問われてきた家でもあります。
私は、伝統と格式ある上野家の歴史を絶やさないためにという、八代目上野泰男の意志を受け継ぐべく、泰男の養子となりました。
その当時は、養子となることの意味や役割について深く考えることはありませんでしたが、今回の歴史アーカイブ企画により、先代からの想いや上野家家訓の重みをしっかりと感じております。
それは単なる血縁の継承ではなく、「意思の継承」であると今では受け止めております。
第三章 先代から受け継いだ言葉
八代目・上野泰男が遺した言葉の中に、「先祖に恥じない仕事をしてもらいたい」という一節があります。
この言葉は、本来、次の世代に向けたものでありながら、時を越えて、今を生きる私自身に向けられているものと感じております。
第四章 現在の株式会社上野
現在、当社はインテリア事業とアグリ事業の二つを柱としております。
これは一見すると全く異なる分野のようでありながら、「人の暮らしを支える」という点において、本質的には創業以来の商いの延長線上にあるものです。
私たち株式会社上野は、
お客様の繁栄と社員・家族の幸せを大切にし、
上野に関わるすべての皆様の成長発展を通じて、
食と住の分野で喜びと安らぎと感動を提供し、
地域社会の発展に貢献していく企業でありたいと考えております。
また、近年では健康経営の推進にも力を入れております。
社員一人ひとりの健康と働きやすさを大切にすることは、企業としての持続的な成長のみならず、地域社会への責任を果たすうえでも不可欠であると考えております。
第五章 不易流行
これからの時代は、過去の延長線上にあるだけでは乗り越えられない変化の連続であると感じております。
だからこそ、私は先代から受け継いだものを守るだけでなく、「変えるべきものは変える」という覚悟を持って経営にあたってまいります。
伝統とは、形を守ることではなく、本質を守り続けることにあると考えております。
そしてその本質とは、
「誠実に商いを行い、社会に必要とされる存在であり続けること」
に他なりません。
結び
九代目として、私はこの家の歴史に新たな一頁を刻む責任を担っております。
その一頁が、次の世代にとって誇りとなるものであるよう、日々の経営に真摯に向き合ってまいります。
先人への感謝を胸に、「誠実」と「不易流行」の精神を未来へつなぎ、
変化を恐れず挑戦を続けながら、次の時代へと歩みを進めてまいります。
上野 拓也
【本企画について】
本アーカイブは、上野家に伝わる史料・写真・記録類をもとに、歴史資料として再構成した特別企画です。
・文章構成・編集:歴史アーカイブ制作チーム
・史料提供・内容監修:上野拓也(株式会社上野 代表取締役)