第三幕 感性教育

-日本画手本が育てた、「見る力」-

 
第二の木箱には、
日本画の手本や
写生教材が
数多く収められていました。
 
花や樹木。
鳥や魚。
昆虫。
風景。
人物。
 
一見すると、
それらは日本画を学ぶための
教材のように見えます。
 
しかし、
一枚ずつ丁寧に見ていくと、
この木箱が教えようとしていたものは、
単なる絵の技法
ではないことが分かってきます。
 
そこに繰り返し現れるのは、
形を正確に捉えること。
自然をよく観察すること。
余白を生かすこと。
そして、
一筆一筆を丁寧に積み重ねることでした。
 
描くという行為は、
対象を深く見ることから始まります。
 
木や花を見つめる。
鳥の姿勢を見つめる。
水の流れを見つめる。
 
その積み重ねは、
やがて物事の本質を見抜く力
へとつながっていきます。
 
この木箱に収められていた
日本画手本は、
画家を育てるための教材
ではありませんでした。
 
一人の後継者が、
自然を観察し、
美を知り、
世界を丁寧に見る
ための教育課程として、
静かに残されていたのです。
 
感性を育てる教育は、
五代目松次郎が後継者へ託した
教育思想を考える上で、
大きな手掛かりとなります。
 

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-後継者に何を学ばせようとしたのか-
 

【本企画について】
本アーカイブは、
上野家に伝わる史料・写真・記録類をもとに、
歴史資料として再構成した特別企画です。
・文章構成・編集:歴史アーカイブ制作チーム
・史料提供・内容監修:上野拓也
(株式会社上野 代表取締役)